IoTおよびAI技術を活用した動物検知システムの開発に関する研究
共生システム理工学類 教授 サラウッディン ザビル
実施期間:令和8年6月~令和9年2月
目的
野生鳥獣による農作物被害は年間約150〜160億円規模で高止まりしており、少子高齢化に伴う捕獲担い手減少や耕作放棄地増加が深刻化を招いています。近年はクマの人里への出没・人的被害も急増し、確実な検知と迅速な情報周知が喫緊の課題です。我々はこれまで、エッジAI(深層学習)とIoTを用いた畑への動物侵入検知・種判別技術を開発し実証してきました。
本研究では、この知見をクマの検知・周知へ応用し、デバイスの省エネ化や逆光等の悪条件下における認識精度の向上を目指します。さらに、複数装置による検知ネットワークを構築し、出没情報を地域へ即座に共有・連携するシステムの有効性を実証実験を通じて検証します。
計画内容
本計画では、申請者の研究室で進めている三つの技術、すなわち (i) 逆光など不良光条件下でも動物を約95%の精度で検知できる認識技術、(ii) バッテリー交換頻度を低減する省電力化技術、(iii) クマ検知に特化した識別モデルの開発を、令和8年8月までに完成させることを目標としています。
これに並行して、検知情報を関係者間で迅速かつ確実に共有するための通信・周知技術および複数装置間のデータ連携機構を9月までに構築します。また、畑や人家近くに設置する際の安全性と実用性を踏まえ、最適な形状やフォームファクタの検討を行い、耐候性試験や無線通信干渉の評価を同時期までに実施します。
実証に用いる装置については、3Dプリンターを用いて適切なケーシングを設計・製作し、物理的損傷や盗難のリスクを低減する構造を採用します。
10月初旬からは実証実験の準備段階として、福島県内の農村地域をはじめとする数か所の畑やクマの出没予測エリアに装置を試験設置します。現場での動作確認を行い、想定される初期トラブルへの対応やシステムの微調整を迅速に実施します。準備完了後の10月中旬より、本格的な実社会での実証実験を開始します。
データ通信は広域カバーが可能な携帯電話回線(LTE等)を主軸として運用しますが、インフラが脆弱な地域への適応を見据え、1~2箇所において長距離・低消費電力通信が可能なLoRaWAN技術を導入し、通信安定性と省エネ効果の比較検証を行います。この検証を2月中旬まで行う計画です。
期待される効果
本研究の完遂により、悪条件下でも高精度な動物検知や通信干渉の低減、消費電力の最適化、および装置間データ共有によるクマの行動予測といった先端IoT・AI技術の実社会における有効性が実証されます。これにより、システムの早期製品化に向けた開発が大きく加速します。
社会実装の面では、高齢化が進む農村地域の鳥獣被害を大幅に軽減し、農業経営の安定化に貢献します。蓄積された検知データのシステマティックな分析は、クマの行動パターンの予測を可能にし、地域住民への迅速なアラート通知による人的被害の防止、ならびに自治体や猟友会と連携した実効性の高い広域防除体制の構築を実現します。
さらに、本技術をシーズとした地域発のスタートアップ企業の立ち上げも視野に入れており、地方創生への寄与も期待できます。
教育的効果としては、深刻な社会課題の解決に直結する研究開発の機会を通じて、参加する学生の創造的思考力やエッジAI・無線通信に関する高度な技術的知見、実践的な課題解決能力を大きく深化させます。
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