プロジェクト

地方中核市周辺農村部活性化のための松川学プロジェクト

食農学類・教授  小山良太
実施期間:2025年~ 3年間

目的

地方の農村部や中山間地域における過疎問題や少子高齢化問題には、集落衰退、限界、消滅、管理の段階に区分され、いわゆる限界集落対策として様々な地域振興策(地域づくり協力隊など)が施されてきました。一方で、地方中核都市や中都市(人口10万人以上)は都市政策の対象であり、典型的な中山間地域対策の対象地域として認識されにくく、周辺農村部における少子高齢化や人口減少の問題は構造的に可視化されにくいです。地方中核都市である福島市(人口29万人)においても、周辺農村部の人口減少や担い手不足の状況が顕在化しつつあります。特に、農業地域類型において「平地」とされるエリアは、中山間地域対策から漏れがちであり、長期にわたって問題が見過ごされてきました。
例えば、福島大学周辺の旧松川町エリアを見ると、水原・金谷川は中山間地域に区分されますが、松川・下川崎は平地となっています。水原などは開畑やパイロット事業の対象となりましたが、平地に区分される松川では区画整備などのハード事業は導入されたものの、人口減少や担い手対策、交流人口拡大事業などのソフト事業を対象地域として認識されてきませんでした。そのため、松川提灯祭りの実施にあたっては松川町内の10集落中3集落で担ぎ手(青壮年)が不在という事態に至っています(2024年)。
そこで本プロジェクトでは、見過ごされがちな中核都市内の農村部に着目し、学生参画型の地元学(地域調査)を実施し、恒常的な交流人口と地域内滞在時間の確保を目指した地域活性化方策の確立を目指します。具体的には、福島市松川町を対象に、地元住民や関連組織・団体と連携した「松川学」プロジェクトを実施し、地域内再投資力の向上(地産地消と6次産業化)と交流人口(学生参画型活動の実践)の常態化を目指します。

計画内容

1年目

① 地元学「松川学」の実践
まず、地域活性化方策を考えるうえでの現状分析を地元住民や関係機関とともに実施します。地域づくりの実践的手法である地元学を「松川学」として実践いたします。地元学の基本は、地域の人(土の人)と学生などの外の人(風の人)が出会い、驚きや発見が起こり、それを表現することで住んでいる人の暮らしぶりや思いを明確にしていく作業です。地元学は、これまで気づかなかった地域の魅力を発見し、地元に活力を与えるという考え方であり、地域づくりのためには「ないものねだり」ではなく「あるもの探し」の視点を持つことが重要です。松川地区に現在も「あるもの」は何かを1年かけて明らかにします。
 
5-6月 田植え、さなぶり
8月 地元学集落調査
10月 稲刈りと地元学
1月

地域づくり報告会

② 社会関係資本の再構築「松川提灯祭り」への参画
震災や原発事故により避難や対応を余儀なくされた地域において、最も大きな課題は社会関係資本の損害です。これまで地域で培ってきた産地形成に関わる投資や地域ブランドなど市場評価を高めるための生産部会活動、農村における地域づくりの基盤となる人的資源やそのネットワーク構造、コミュニティー、文化資本、消防団、祭事、共同墓地の清掃など多種多様な社会関係資本が損害を被り、地域社会は危機の段階から変動を前提とした構造に変化しています。避難指示区域では十数年にわたりこれら地域資源・社会関係資本を利用することができませんでした。この損失分をどのように測定するか、対策としてどのように穴埋めするかは極めて重要な問題です。原子力損害賠償紛争審査会でもまったく手つかずの状況です。そこで、実際に空洞化が顕在化しつつある松川提灯祭りに担ぎ手として外部人材である大学生や協力隊が参画し、新しい祭りの組織構成を検証し、実践します。10年後、20年後の持続可能性についても検討します。

9月 稲作暦と地域の祭事についての学習会
10月12日、13日 提灯祭り
11月 振り返りと組織構成の再検討

2年目

①②は継続して実施します。
③ 農商工連携と6次産業化
松川町では、地元唯一の酒蔵である金水晶酒造店の移転など、地域企業の空洞化が顕著です。福島酒米研究会(水原)と地元日本酒の製造を行ってきましたが、新たな地場産品の開発が求められています。松川学の延長上で商品開発の可能性を探ります。かつての地場産品・伝統野菜である「あさつき」など、適地適作に根ざした産品を調査します。

3年目

①②は継続して実施します。
④ 地場産業の再発見と域外への展開
③の産品開発を商品化も視野に入れて実践します。

期待される効果

本プロジェクトの目的は、福島大学の立地地域である松川町において、地元住民や関連機関と連携して「松川学」を実践し、地域活性化方策の確立を目指すことです。見過ごされがちな中核都市内の農村部に着目し、学生参画型の地元学(地域調査)の実践を通して、恒常的な交流人口と地域内滞在時間の確保への対策を講じます。これにより、同様の課題に直面する多くの地方中都市や中核都市に対して、課題解決方策の提示を行います。
松川学プロジェクトの実施に関しては、福島市農政部や福島県農林水産部農林企画課の中核都市周辺農村部対策として将来的な予算化が期待できます。その際には、福島大学デザインセンターにモデルプロジェクト(受託事業)として展開することを考えています。
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