プロジェクト

福島発・立ち直りの6次化プロジェクト(2023年度~2025年度)

申請者:高橋有紀(行政政策学類・准教授)

<プロジェクトの背景>

 2022年の刑法改正による「拘禁刑」の創設や、2023年に策定された第二次再犯防止推進計画の下では、犯罪や非行をした者の立ち直りに向けた国、地方公共団体、民間が一丸となった分野を超えた創意工夫が求められています。また、2020年には社会福祉法の改正により、地域の多様な人々が各々の持ち味を生かして、同じ社会に暮らす人々の複雑な課題の解決に向けて支え合う「地域共生社会」の実現が目指されています。

 真の「地域共生社会」の実現に向けて、矯正や更生保護といった刑事政策の担い手や大学も地域資源のひとつとして、それぞれの経験やノウハウを社会に還元する必要性が今まで以上に高まっています。

<プロジェクトの概要>

 日本の刑事政策では、伝統的に犯罪の「一次予防」(防犯、取締り)、「二次予防」(刑罰、矯正)、「三次予防」(更生保護、再犯防止)が中央省庁の「縦割り」によって担われがちで、相互の交流や、地方公共団体や大学との連携場面は限られてきました。一方、農林水産業では近年、従来の「一次産業」「二次産業」「三次産業」を掛け合わせた「6次化産業」による高付加価値な商品開発や地方創生が注目されています。

 本プロジェクトでは、この「6次化産業」と同様に、「一次予防」「二次予防」「三次予防」を掛け合わせた「立ち直りの6次化」により、人文社会科学、自然科学の多様な知見やノウハウを取り入れた斬新な取組みを柔軟に構想し、罪を犯した者をも取り残さない、真の「地域共生社会」の実現を目指します!

<活動計画と期待される効果>

 福島大学地域未来デザインセンターと福島刑務所は包括連携協定を締結しました。これにより、特定の学類や研究室にとどまらず、多様な分野の教員やゼミ・研究室が福島刑務所の作業、教育・改善指導等において研究成果の社会実装に向けた取組みをおこなうことや、本学の教育、研究活動に福島刑務所の人的・物的資源を利活用することが期待できます。

 また、福島県再犯防止推進計画を踏まえて、福島県庁や福島保護観察所をはじめとした、県内の関係機関とも連携し、地域の課題と再犯防止の推進の課題をともに解決する活動にも取り組みたいと考えています。具体的には、担い手の減少が深刻化する産業分野における刑務所出所者等の雇用促進に向けた政策提案、罪を犯した者を含む住民の「望まない孤独」対策としての「居場所づくり」の取組みなどを通じて、誰もが活躍できる魅力ある地域づくりに寄与することを検討しています。

さらに、犯罪や非行をした者の立ち直りに関する政策立案や支援施策に関心のある県内の地方公共団体や福祉機関の皆様、刑事司法分野に関する法教育、「総合学習」やCSR活動に関心のある教育機関や民間企業の皆様からのご相談にも幅広く応じたいと考えています。

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(写真1)福島大学教職員や大学院生が福島刑務所を見学し、意見交換をおこなった様子。

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(写真2)刑事政策ゼミによる「福島大学矯正展」の一コマ。

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